July 01.2010

都会で畑を耕そう!

里山を耕すことは、まちを耕すこと。
自然との共生で、自分らしく生きるまちづくり。

おいしく安全な水が飲みたい!

日野市新井周辺、閑静な住宅の真ん中に大豆畑が。向島用水のきれいな水がはぐくむ大豆は、ふっくらつややか。豆腐や味噌に加工します。

朝、鳥の鳴き声で目覚め、思い切り窓を開け緑の新鮮な空気を浴びる。そして朝食には自分の育てた野菜が食卓に・・・。そんな生活をしたいと思うのは、都会に住む誰しもの願いです。

でも「自分が暮らす周辺には緑がないし、まして自分で育てた野菜が食べられるなんて・・・」と、諦めてはいませんか。

じつは自分が気づいていないだけで、まだまだあなたの住むまちにも緑は残っているのかもしれません。数年前から各地にある里山を中心にした農作業を楽しむ会が活気づいています。地域の特性に合わせその活動内容はさまざまですが、「農業は初めて」という人も気軽に参加できるのが魅力です。 里山を耕し、自分らしく暮らせるまちづくりをしてみませんか。

文・写真:蛭田有里子

里山を守ることで、そこに生きる
すべての生き物が守られる

京都日野市に拠点をおく、NPO法人「やまぼうし」は約30年以上も前から、 「自然と人とがともに豊かに生きられるまちづくりを推進したい」という思いで、活動してきた人を中心に2001年に設立されました。

そしてこの「やまぼうし」の活動は、おもに障害を持つ人たちで運営されています。「やまぼうし」の理事長を務める伊藤勲さんは長年、障害者の施設で働いていたこともあり、「障害者が主体的に活動できるまちづくりをしたい」と考えていました。そこで里山を耕し、地域の農家の方の協力を得て、なくなりつつある地場農業の活性化を考えたのです。

 そして今、伊藤さんたちが立ちあげた「やまぼうし」は、現在日野市万願寺の周辺に畑や作業所を持ち、 農園で収穫した作物を利用し、味噌や漬物などの加工品を作ったり、そしてその加工品や野菜を利用したカフェの営業をするなどの活動を広げています。また竹林を管理し、竹炭・竹紙などを作る活動もしているのです。

土が、川が、鳥が、そして人が自分らしく生きられるまちになる

都会で畑を耕そう!

この「やまぼうし」の活動の中でも、とくに注目したいのが環境保全の目的のために作られた『水と緑の循環プロジェクト』です。里山農業の中心にある新井地区には浅川を源流とする向島用水が流れており、その流れは忘れかけていた風景を思い出させてくれる豊かな水です。この豊かな水流で育まれる水田の稲作りや、大豆畑での援農は地域の自然を守り、また今ではめずらしい用水路保全にも役立っています。

この畑で作られた大豆は、豆腐や味噌作りに使用され、「やまぼうし」の自然食品店『おちかわ屋』でも販売される予定になっています。そのほか『おちかわ屋』では自然食品の販売や、地場野菜の販売、作業所で作られた雑貨なども販売できる場となっています。すべてが循環し自然へ還元される活動、これが「やまぼうし」が考える里山を耕す活動なのです。

障害者の問題は地域の問題

文:伊藤勲 NPO法人「やまぼうし」理事長

私は約30年間にわたり、地域での障害者の自立支援と環境保全活動に取り組んできました。

初めは障害者が働ける作業所として、自然食品店『おちかわ屋』などのワークショップでの活動を支援してきました。しかしこのワークショップでの活動は、障害者の人たちのためだけの問題として捉えてきているのではと感じはじめました。私は障害者の人たちが抱える問題は、結局は地域問題なのではという考えにいきついたのです。もし障害者の人たちが、いきいきと気持ちよく暮らせるまちなら、それは小さな子どもからお年寄りまでも安心して自分らしく暮らせるまちだと思えるからです。保護するのではなく、ひとりひとりが主体的に暮らせるまちづくりをする。多くの自然が残る里山を耕すことは忘れかけていた、人と人、 人と自然との交流をもう一度つくりだすことなのです。

里山をめぐる活動。
ひとりひとりが自立できるまちづくりへ

「やまぼうし」が働きかけている4つの取り組み

1.総合生活援助

障害を持つ人が、ひとりで自立し生活できるようサポートする。日々の相談や、ケア付き下宿の運営など。 ヘルパーステーション「みずぐるま」では、自立する障害者や、高齢者を応援する取り組みがされている。

2.デイワークの場

障害を持つ人が中心となり、自然食品店・カフェ・里山耕房(加工品製造など)の運営を行っている。ワークショップ『おちかわ屋』では、地場有機野菜の販売をはじめ、自然食品、雑貨などの販売を手がける。

3.グループホームの運営

日野市、八王子市に3つのグループホームを持ち、障害を持つ人が自立した生活を送れるようにサポートする。木のぬくもりを感じさせるアットホームな雰囲気の中で、それぞれの個性に合った生活をしている。

4.環境保全活動

水と緑の循環プロジェクトで環境や人が安心して暮らせるまちづくりをめざし、活動の場を里山からまちへと広げている。

  • 向島用水がめぐる地区の援農を支援
  • 一般家庭ゴミを利用し、八王子市堀の内地区の鈴木牧場と連携しての、堆肥化循環モデル事業
  • 里山での子ども農園の運営
  • 里山での竹炭焼き
  • 日野産大豆を使った加工品づくり
  • 浅川『水辺の楽校』の推進

まだまだある自然との共生活動。
生ごみを堆肥化して里山へ

都会で畑を耕そう!

可燃ごみの約60%が生ごみということを知っていますか。平成13年度の日野市可燃ごみ組成調査によると、可燃ごみのうち43.1%が調理時に出る生ごみ、そして食べ残しが13.6%・草木類5.5%となっています。現在日野市新井地域では、「やまぼうし」の障害を持つ人が中心になり、地域の22世帯と協働で、家庭から出る生ごみを回収し、それを堆肥化して販売する活動をしています。もちろん自分たちが耕す里山にもその堆肥が使われます。

 水分の多い生ゴミは、焼却する際に多くのエネルギーを必要とし、余分なCO2も発生させます。このごみを焼却するのではなく堆肥化することによって、自然へと循環されるのです。今後この活動は新井地区のみならず、地域住民の会や日野市なども参加しての大きな自然循環プロジェクトとなるようです。今後このような取り組みが各地に広がっていけば、ひとりひとりのごみに対する意識も変わっていくのではないでしょうか。

──まだまだ各地にある里山農業クラブ。土にふれ自然に還り、自分たちのまちを耕す

長池里山クラブ

東京都八王子市

八王子市別所にある長池公園を散策すると、住宅街の真ん中とは思えないほどの、懐かしい風景が目に飛び込んできます。手前に見える水田では有機栽培のお米が作られ、その奥の炭焼き小屋では、公園内にある雑木林を手入れのため伐採し、木炭と木酢液を作っています。ほかにも野菜やハーブを育てたり、周辺の子どもたちとともに里山に生息する珍しい生き物も観察します。こちらで作られた木酢液・炭製品などは、長池公園内にある「長池ネイチャーセンター」で販売もされています。この「長池里山クラブ」は、もともとは公団が管理運営していましたが、八王子市の公園となり今は地元の有志の皆さんで運営されています。この公園内にある「長池ネイチャーセンター」では、長池里山クラブの活動内容なども展示されています。

  • 住所:東京都八王子市別所2-58 長池ネイチャーセンター内
  • Tel:0426-78-4616
  • Web Site:http://www.satoyama.info/
かたくりの家

東京都八王子市

八王子堀の内地区にある「かたくりの家」は、地元の農家の鈴木亨さんの協力を得て、知的障害者の通所授産施設として、自然に親しみながら四季折々の野菜や、果物の栽培など行っています。この野菜は、新鮮でおいしいと近隣の方にも評判。収穫された新鮮な野菜は、京王線南大沢駅前・フレスコビル1Fで営業するカフェ「ぷらざ・de・かたくり」でも使用され、販売も行われています。

  • 住所:東京都八王子市堀の内1236
  • Tel:0426-74-0520
都筑中央公園里山倶楽部

神奈川県横浜市

横浜市都筑区の「都筑中央公園里山倶楽部」は、都筑区の行政と、地元の市民団体、有志の皆さんが協力しあい、公園内の竹林・雑木林から森林保全のため伐り出された竹や雑木を炭に焼き、再利用化を図っています。また管理する畑では、公園内を清掃した際に出る落ち葉などを利用し、田畑を耕しています。子どもたちがのびのび走り回れる、おおらかな自然が残っています。